しらす書店

いらっしゃいませ。長旅もお疲れでしょう、少し休んで行かれてはどうですか?お茶をすすりながら本を手に取ってっておくれなんし

遺書#2〜僕は君をちゃんと愛せてたでしょうか〜

「あの?」

「あ、ごめんなさい」

ふと我に返り彼女の腕を掴んだ自分の手を離しました。
きっと、その時僕は真っ赤な顔をしていたと今となっては、思います

「あぁ…いえ、そうではなくて」

彼女は、そう言いながら申し訳なさそうにチケットを自分の顔の前まで持ってきました。

「あぁ、電車代ね、大丈夫です。気にしないでください?」

「ありがとうございます」

彼女の赤く染まる頬を観れたことが嬉しくありました。そう考えると電車代の事なんてこれっぽっちも惜しくはありませんでした。

緑風が僕たちの間を通り抜け、じんわりと汗ばむ僕の胸元を涼しくさせ、
彼女の使う香水か、柔軟剤の香りを一緒にこの空間に散りばめて去って行きました。

「初夏って言うんですかね?」

「暦の上ではもう夏か、もう少し涼しくてもいいものの、日本の夏は湿気が多くていけないね」

「ええ、そうですね」

彼女の笑う顔がとても美しく、一瞬、僕はなんのために鎌倉へ行くのか忘れてしまいそうでした。
この時間が続けばいいのに考えたのは事実です

神が最後の教えだとして彼女を僕の前に連れてきてくれたのなら、ほんの少しだけほんの少しだけ、彼女の手を取って生きてみようかと
考えましたが、それも一瞬の事でした。

「今晩、貴方の宿に一緒について行ってもいいですか?」

そう言う目は何もかも見透かしているようで
深く深く光一つ通す事が出来ないような悲しい目だった

「ええ、構いませんよ」

はい。としか言えませんでした。
その返事の後直ぐに、駅員の到着するという放送がなり、僕たちは
そっと静かに電車の席を立ち降りました

遺書〜僕はちゃんと君を愛せてたでしょうか〜


ニュースです。

先ほどですね。神奈川県 鎌倉市 由比ケ浜海 周辺で重傷の男女二人が発見されました。

ただ今身元を確認中です。

警察は今の所自殺未遂ではないかと推定しています





世間に二人事が告げられた。


 





そっくりな顔をした美少女と美少年がバラバラに発見されたとしても目撃者の一致や、発見地からの距離などから情死だったのではないかと

マスコミやメディアは、散々騒ぎたおしていた。


のちに知られたのは

鎌倉の旅館で彼らは三泊していたらしい。

そしてチェックアウトの末、鎌倉の海に身を投げたそうだ。

また、その部屋からも原稿用紙100枚に書かれた遺書が見つかった。





書いたのは男性の方だったらしい。
















「遺書


私の名前は葉とでもしておきましょうか。

彼女の名前は…うん、そうですね

とても透き通った白い肌をしておりますから、雪としておきます。


これを読んでいるということは死んだのか

それともはたまた未遂でこの世とあの世をさまよっているのかだと思われます。

僕と彼女は、4日ほど前に初めて出会った間柄でございます。大変驚かれましたかね

お互い細かいことはわかりませんでした。

けど一目でわかった事もあったのです

「この子、死んじゃうんだな」って事でございます。

二人目があった時そんな気がしてしまい気がついたら声をかけてしまっておりました。

これが僕らの出会いです。


「雪さんと言うんですね」


「えぇ、そうです。貴方は?」


「僕ですか?僕は、葉と言います」





場所は東京でした。

東京駅出発の電車の相席で僕が声をかけのが始まりだったと思われます。


「何処へ行かれるんですか?」


「僕は鎌倉に」


「そうなんですね」




白いワンピースを着た雪さんは、そっと僕の顔を見て微笑んで、自分は何処に行くのかは告げず会話は一時中断しました。


電車が走る音だけが響いた。


僕は窓辺に視線を向けた。彼女も既に向けていて彼女の視線の先が気になったから


だがしかし、彼女の視線の先に何が写ってるのか僕にはわからなかった。


「葉さん。私ね、お腹空きました」


「え?あ、ええ。まぁ、もう12時ですからね。

品川駅でお弁当を買いましょうか」




不意の彼女からの言葉がとても柔らかくて

つい、詰まってしまったのを覚えております。


そしてその後、二人で品川駅で降りて鯵の押寿し食べました。

雪さんの食べ方はとても綺麗で良い所のでのお嬢さんなんだろうなとこの時私は推測したのを覚えてます。



「私も鎌倉行こうかな…」


「え?」


まるで初めての反抗を親にしたような子のようにそのことばだけで精一杯だったように僕は見受けられました。



「良いですよ? 一緒に遠くに行きましょ」




空になった鯵の押寿し弁当と箸を袋に入れて結んだ後、彼女の前に立ち手を差し伸ばした。





それが僕の精一杯の返事だった。






彼女の少し桃色に染められた頬に喜びを感じて僕は鎌倉駅行きの電車のチケットを買うために彼女の手を引いた